2008年 06月 12日 ( 1 )

内田樹さんの分かりやすさ 2

内田さんの『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)の中から、なるほどそのとおりだと思えるような説明を抜き出して、それがどうして分かりやすいのかということを考えてみようと思う。

内田さんは第1章で構造主義に先行する思想史を作った巨人として、マルクス・フロイト・ニーチェについて書いている。このうち、フロイトを語った部分での「抑圧」という用語の説明が実に分かりやすかった。「抑圧」という言葉を辞書的に解釈すれば、「抑制し圧迫すること。むりやりおさえつけること」と書かれている。だが、この概念ではフロイト的な「抑圧」を理解することが出来ない。

フロイトが語る「抑圧」とはあくまでも「無意識」という心の領域の働きのメカニズムとして提出されている。この辞書的な解釈では、「無意識」の働きで起こっているのではなく、自分で自覚して「無理やり押さえつける」ということをしているように受け取れる。この「抑圧」は無意識の「抑圧」ではなく、自覚的な有意識の「抑圧」になってしまう。

辞書的な意味を心理学的なものに拡張しても、それは「心理学で、不快な観念や表象・記憶などを無意識のうちに押し込めて意識しないようにすること」と書かれているだけだ。これは「無意識」を考慮した概念のように見えないこともないが、よく考えるとおかしいところがある。「押し込めて意識しないようにすること」は、「意識しないようにする」ことを意識してしまうのではないだろうか。「無意識」というのは、このようなことが自覚できない、自分には決して分からないからこそ「無意識」だと呼ばれるのではないだろうか。

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by ksyuumei | 2008-06-12 09:44 | 内田樹