2008年 06月 08日 ( 1 )

内田樹さんの語る中華思想 2

内田さんが語る中華思想のまず第一の特徴は、それが「ナショナリズム」ではないということだった。内田さんは、なぜ「ナショナリズム」ではないことを強調したのだろうか。この帰結そのものは、内田さんが定義するイメージから引き出せる論理的な帰結であって、実際の中国の歴史を見て、事実から引き出した観察結果ではない。つまり、中華思想というものが中国の行動の中に中心的な位置を占めていた時代は、それが「ナショナリズム」として、国家の一体感を感じる人々が出てきたり、国家の利益のために一丸となったりするという現象が出てこないだろうということが予想できる。中華思想は「ナショナリズム」ではないのだから、「ナショナリズム」の発露のように見える行為が人々の間に生まれないということが、その時代の常識だっただろう。

最近の中国を見ていると、オリンピックの聖火リレーでの異様な盛り上がり方といい、「ナショナリズム」を感じさせるようなところがある。この事実の解釈に、それは中華思想が薄れて近代国家主義が浸透したために「ナショナリズム」の傾向が高まったのだとするものも考えられるだろう。中華思想が薄れたために「ナショナリズム」の傾向が高まったと見るのは、一つの論理的展開になるだろう。

また、中華思想が薄れたとはいえ、それがまだどこかに残っているなら、西欧的な近代国家としての「ナショナリズム」、たとえばナチス・ドイツに見られるようなものや、アジアの中で西欧に近い近代化を遂げた日本の軍国主義下での「ナショナリズム」とは、どこか性格が違うものが見られるのではないかとも考えられる。現代中国の「ナショナリズム」の、中国的特性を理解するのに、中華思想というメガネは有効性を持つように思う。内田さんの「ナショナリズムではない」という指摘も、このようなメガネとの関連で評価できるのではないかと思う。

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by ksyuumei | 2008-06-08 12:29 | 内田樹