さて、野矢さんが提出する練習問題を考えていこう。まずは次の問題だ。
問1 次の文章をより論理的に明確になるように接続関係を明示して書き直せ。 「慣れないスピーチをするようなとき、口の中がカラカラに渇くが、危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は必要な機能を活性化し、不必要な機能を停止する。襲ってきたライオンから逃げるとき、さっき食べたものを消化しているヒマなど有りはしない。危険なときには唾液腺をコントロールする神経は抑圧され、スピーチの時も口が渇くのである。」 この問題を解くには、まず全体の論理構造を把握してその部分を構成している一つ一つの命題がどのように接続されているかを正しく捉まえなければならない。そこで上の問題文を、細かく単純な命題に区切って番号をつけてみよう。 1 慣れないスピーチをするとき、口の中がカラカラに渇く。 2 危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は必要な機能を活性化し、不必要な機能を停止する。 3 襲ってきたライオンから逃げるとき、さっき食べたものを消化しているヒマなど有りはしない。 4 危険なときには唾液腺をコントロールする神経は抑圧される。 5 スピーチの時も口が渇くのである。 さて、全体の論理構成としては、1で提出した事実に対して、2で違う方向から説明を開始し、それが5の根拠となっているという構成になっている。また、1と5はだいたい同じ内容を語っているとも考えられる。違うのはその論理的な位置づけになるだろうか。1ではまず事実として提出されている事柄が、5では論理的な帰結として、その前の主張が根拠になって「口が渇く」ということの合理性が語られている。事実として観察されることに、ちゃんとした合理的な説明がつくのだという主張がこの問題文の論理構成ということになるだろうか。 野矢さんは、1と2の関係を 1←2(2が1の根拠となっている) という論理構造だと解答では述べている。これは1と2を見ているだけでは判断するのは難しい。2の理由からすぐに1が導かれるという関係が単純ではないからだ。それは説明を要する。2の理由から1を導くためには、次のような前提が必要だろう。 ・「慣れないスピーチ」は動物における「危険な状況」に相当する。 ・唾液を出す機能は「不必要な機能」なので停止される。 ・周りの反応を見たり、間違いなく話すために神経を集中させることが「必要な機能」になり、それが活性化するために、他の機能が停止される。 このような前提を認めれば、2の主張と合わせて、これらが1の根拠になって1が論理的な帰結として導かれる。もし問題の文が、1と2だけしかなかったら、この2つだけから論理的な導出の関係になっていることを読み取るのは、いくつかの予備知識を持たなければならなくなるだろう。 だが、問題文では、これらの論理的な関係の説明が3以下で付け加えられていると考えられる。1と2の主張の結びつきが、3以下の説明で5が結論されることによって、その論理関係もそこから読み取れるという構成になっている。全体の論理構造を図示すれば次のようになるだろうか。 1←(((2たとえば3)→4)→5) この構造の下にそれぞれの接続関係にふさわしい接続詞を考えると次のように考えられる。 1 なぜならば 2 (からである) 2 たとえば 3 (3は具体例の提示であると考えられる) 3 だから 4 (危険なときには唾液腺をコントロールする機能は不必要になり停止されると考えられるから) 4 したがって(だから) 5 (「だから」を二つ続けるよりも、「したがって」の方がその前のいくつかから帰結されるというニュアンスが出るので、語感という面から「したがって」の方がふさわしいだろうか) 野矢さんの解答例は次のようになっている。 「慣れないスピーチをするようなとき、口の中がカラカラに乾く。「それは」、危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は必要な機能を活性化し、不必要な機能を停止する「からである」。「たとえば」、襲ってきたライオンから逃げるとき、さっき食べたものを消化しているヒマなど有りはしない。「だから」、危険なときには唾液腺をコントロールする神経は抑圧される「ことになる」。「したがって」、スピーチの時も口が渇くのである。」 野矢さんの解答例は、できるだけ原文をそのまま使いながら接続詞を加えるというものになっている。これをもっと読みやすく・わかりやすく書き換えるなら、最後の一文を「したがって」だけで続けるのではなく、「スピーチの時に口が渇くというのは、こうした理由によるものなのである」のようにした方がよいかもしれないと、野矢さんは付け加えている。野矢さんの解答例は、だいたい僕が考えた全体の構成と重なるので、この解答に対して、これが正しいと納得できるものになっている。 次の問2は問題の文章が長いのでエントリーを改めて考えてみようと思う。
by ksyuumei
| 2008-03-03 09:13
| 論理
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