「<堀江メール>自民、民主両党の全面対決は週明けに」というニュースで報道されている内容がなかなか興味深い。民主党は、自らの主張の証拠固めとして、「国政調査権の発動による資料提出を求める方針」を提出したようだ。しかし、自民党はこれに反発して、「「挙証責任は民主党にある」と拒否する構え」を見せている。
民主党の主張は メールの信憑性を確保するために「国政調査権の発動」が必要 というもので、自民党はそれに対し メールの信憑性を証拠立てるものがなければ「国政調査権の発動」には反対 という反応をしている。果たしてどちらの方が、論理的には真っ当な主張といえるのだろうか。僕には、民主党の主張の方が論理的な順番としては真っ当な感じがしている。それは、政治家のプライバシーをどう捉えるかという問題と関係していると思われる。 以前に田中真紀子さんの長女のプライバシーが暴かれたときに、宮台真司氏は、政治家は政治家でいる間にはプライバシーというものは無いと断言していた。すべての行動が政治的なものとして公開の原則にさらされているというものだった。 田中さんの長女の問題で難しかったのは、それが田中さん本人のプライバシーではなく、長女のものだったということだった。それが政治家田中真紀子さんの、政治活動に関係したプライバシーであるかどうかの判断が難しかった。たとえ家族であろうとも、その政治活動に深く関わっていれば、そのプライバシーが政治家本人と深く結びつけられて公開の原則にさらされる場合もある。 田中さんの場合は、かなり微妙なところがあって、『噂の真相』編集長だった岡留さんなどは長女は公人に準ずるという判断で、プライバシーが公開されても仕方がないという判断をしていたようだ。僕は、そのプライバシーの内容がつまらないものであったという理由から、政治活動とは無関係ではないかと感じて、これは暴露する正当な理由はどこにもないと感じていた。 プライバシー暴露に対する出版差し止めの問題は、また別の論理で判断しなければならないと思ったが、少なくともプライバシーの暴露の正当性という点は、僕は『週刊文春』の主張は間違いだと思っていた。 「国政調査権」が発動されれば、武部氏の二男の銀行口座の情報などがすべて公開されることだろうと思う。そうなると、政治家本人ではない家族のプライバシーが公開されると言うことになる。この問題の場合は、二男のプライバシーが、政治家としての武部氏の公人活動に深い関係があると判断出来るかどうかで、プライバシーの暴露の正当性も生まれてくる。 このことに対して、上の記事では、 「民主党は現時点では送金の事実を示す物証を入手していない模様だが、出入金の口座については「銀行名、名義人について証言は得ている」(幹部)としている。このため、国対筋が18日、「どこまでの情報開示が可能か、情報提供者と調整している」と語るなど、あくまで自民党を追い込む姿勢を崩していない。 ただ、現状での情報開示に対しては、党内では「口座が消され、証拠もなくなる。情報源の安全にもかかわる」との意見が強く、情報開示の条件として資料提出に事実上の強制力を持つ国政調査権の発動を事前に担保する考えが浮上した。」 という「国政調査権発動」の理由を挙げている。この理由は僕には正当性があるように見える。自民党がこれを拒否する正当な理由はどこにあるのだろうか。それは記事に書かれていないので想像するしかないが、僕にはプライバシーの問題以外にその理由が浮かんでこない。新証拠の提出がなければ「国政調査権」を発動させないと言うのは、論理的な理由としては整合性を持っていない。 民主党は、新証拠の提出は、提出することによって証拠が消される恐れがあるとしているのだから、消されない保障をした上での提出がされなければならないというのは論理的に正当性がある。それに対し、それを拒否する論理は、民主党のこの理由に対しては何も反論出来ていない。 自民党の側が、もしも100%潔白なのであれば、民主党の主張通りに情報を開示して、その上で民主党の間違いを糾弾すればすむのではないかと思われる。むしろその方が民主党に与えるダメージは大きい。民主党という政党を、政治的に完全に葬ることだって出来るだろう。これだけ主張していることがもし間違いだったら、民主党は政党としての信用をすべて失って壊滅するだろうと僕は思う。 それが出来ない自民党は、論理的に考えれば100%潔白ではないということを自ら語っているようなものだ。もちろん、これは今回の問題では潔白だが、それ以外の事柄で暴露されてはまずいことがある、というような可能性も考えられる。すべては事実が明らかにならなければ分からないことばかりだ。 政治の世界だから、100%潔白だと言うことはあり得ないと言うことは予想出来る。だから、自民党が逃げたい気分も分かると言うことで、自民党への理解を国民世論が示すようだと、政治の不透明さはいつまでたっても消えないだろう。 世の中の出来事は、必要悪と呼ばれるようなものがあることも確かだが、それが必要悪かどうかは、やはりそこで何が起こっているかという事実が知らされなければ判断することが出来ない。民主党の勇み足であろうと、あるいは自民党が結果的にはいいことをやっていようと、情報が明らかにされることは一般国民にとってはいいことだと僕は思う。 記事では 「前原誠司代表は17日の日本外国特派員協会の講演で「国政調査権を行使して銀行口座や入金記録を明らかにできれば、信ぴょう性に対する疑問は氷解する。小泉純一郎首相が『ガセネタ』だというなら、堂々と調査権を行使し、出入金記録の開示を金融機関に求めるべきだ」と調査権発動の必要性を強く訴えた。」 とも伝えている。利害関係から離れた一般国民としては、この前原代表の言い分に賛同して欲しいと思う。ここには真っ当な論理が語られているからだ。それに対して自民党の側の 「自民党は調査権発動は突っぱねる方針で、国対幹部はメールの存在を指摘した永田寿康衆院議員の17日の再質問に触れながら「民主党はメロメロ。この話はもうおしまい」と語り、早くも「幕引きムード」をちらつかせている。」 という言い分は、本当のことは何も知らせず、自分たちに都合の悪いことが出なければそれでいいと言っているようにしか聞こえない。昨日たまたま見ていたテレビで、評論家の宮崎哲弥氏が、この問題は自民党と民主党が真っ向から対立していると語っていた。真っ向から対立しているのだから、どちらかが正しくてどちらかが嘘を言っているはずだ、とも語っていた。 そのように対立する主張をする以上、このことに決着をつけなければ国民としては納得しないと言うことを代弁していた。そして、もしもこれがうやむやに処理されるようなことになってしまったら、表では対立するようなことを言っておきながら、裏で手打ちをしていたのだなと理解しなければならないとも付け加えていた。自民党の幕引きというのは、そういうものになるだろう。 この問題は、うやむやな幕引きをすれば、民主党の方が回復不可能なくらいのダメージを受ける。だから、よもやそういう手打ちはしないだろうと思うが、自民党が強引に押し切るかどうかは世論の動向にかかっている。ポピュリストの小泉さんとしては、世論が大きな反対をすればそれを無視することは出来ないだろうが、世論が自民党の勝手な言い分に抗議をしないようであれば、おそらく平気で押し切るだろう。論理はどうであれ、世論の支持が下がりさえしなければ今までもメチャクチャな論理で押し切ってきた小泉さんだから、今回も同じようにするだろう。 この問題でグレーに染まった政治家の武部氏を、グレーのままで放置するかどうかは、日本の民主政治というもののレベルが問われることになるだろうと思う。黒であるのか白であるのか、ハッキリさせる方向へと進んで欲しいと思う。
by ksyuumei
| 2006-02-19 09:50
| 社会
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