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論理トレーニング 19 (議論の組み立て)

練習問題の問3は次の問題である。


問3 次の文章を読み、根拠の関係にあるものをすべて取り出し、その関係を、「1→(2~5)」や「(1,2)←3」のように文番号と記号を用いて答えよ。

1 刺身は活け作りに限るかといえば、そうでもない。
2 締めたばかりの魚は、実はおいしくないのである。
3 鯛などの刺身は身のしまったコリコリした感触にそのうまさがある。
4 一般に、魚肉のような、タンパク質でできているものは、アルカリ側だとドロリとした感じになり、酸性になるとコリコリとした感触になってくる。ところが、
5 鯛などの白身の魚は、生きているときはややアルカリ側にあり、締めてから徐々に乳酸などが身の中にできて、魚肉が酸性になる。だから、
6 活け作りはかえってドロリとした感触になり、むしろしばらくたった身の方がコリコリしておいしいのである。さらに、
7 締めたあとしばらく寝かせておいた方が、うま味が出ておいしくなる。
8 魚のうま味成分は、主にグルタミン酸とイノシン酸である。
9 この内、グルタミン酸の方はほとんど増減しない。他方、
10 イノシン酸は、魚が生きているときには肉の中にわずかしか含まれないのだが、死後に猛スピードで増えてくる。そして
11 イノシン酸は、ほんの少し増えても、グルタミン酸との間に相乗作用が起こって、遙かに強くうま味を感じるようになるのである。


この問題から、根拠の論理関係を取り出すのだが、それが表現されている接続詞は5と6の間の「だから」しかない。表現されているのはこれだけだが、根拠の論理関係が、ここの他には認識されていないかといえばそうとは限らない。認識の中にあってもそれが直接には表現されていないということはあり得る。

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by ksyuumei | 2008-03-04 10:48 | 論理

論理トレーニング 18 (議論の組み立て)

さて、長い問題文の問2を見ていこう。


問2 次の文章において、その主題、問題、主張を、それぞれまとめよ。(必ずしも問題文からの抜き書きではなく、自分で的確にまとめよ。)
「今日の日本では、人体の一部の無償提供は禁止されていない。献血や、骨髄や腎臓の提供はむしろ立派な行動と考えられている。ところが臓器の売買は法律によって禁止されている(臓器移植法第11条)。だがそれはなぜだろうか?臓器を無償で提供することと有償で提供することに、どうしてそんな相違があるのだろうか?前者の人は患者を助けたいという利他的欲求だけから出ているのに、後者の人はそれよりも臓器の対価を得たいという利己的な欲求が強いからいけないのだろうか?しかし取引によって自分の利益を得たいというのは自然な欲求で、これを一般的に禁止していたら市場経済は成り立たない。だが議論の都合上百歩譲って、臓器移植の場合は無償の贈与の方が望ましいと認めてみよう。しかしそうだとしても、臓器を無償で提供する方が有償で提供するよりも賞賛に値する、と言えるにとどまる。始めから臓器を提供しない人と比べて、有償で提供する人が非難されるべき理由があるだろうか?前者の人々は臓器移植を求めている人々から利益を得ているわけではないが、その一方彼らに利益を与えているわけでもない。これに対して、自分の臓器を売る人々は対価と引き換えにではあるが、その対価以上に臓器移植を求めている人々にとって望ましい選択肢を与えている。臓器を売る人の方が売らない人よりも社会のために役立っているのである。」


この問題文は、最後の主張になっている「臓器を売る人の方が売らない人よりも社会のために役立っているのである」ということに違和感を覚えるのではないかと思う。この主張そのものに説得されがたいものを感じる。説得されがたいために、この文章そのものの論理構成に欠陥があるのではないかという疑いすら生じる。しかし、野矢さんがこの文を問題として選んだということの意味を考えると、賛成しがたい主張であっても、論理的にはその構成に不備がないものがあり得るというものとして提出されているのかもしれない。実際、野矢さんは解答で次のように注意している。

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by ksyuumei | 2008-03-03 23:08 | 論理

論理トレーニング 17 (議論の組み立て)

さて、野矢さんが提出する練習問題を考えていこう。まずは次の問題だ。


問1 次の文章をより論理的に明確になるように接続関係を明示して書き直せ。
「慣れないスピーチをするようなとき、口の中がカラカラに渇くが、危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は必要な機能を活性化し、不必要な機能を停止する。襲ってきたライオンから逃げるとき、さっき食べたものを消化しているヒマなど有りはしない。危険なときには唾液腺をコントロールする神経は抑圧され、スピーチの時も口が渇くのである。」


この問題を解くには、まず全体の論理構造を把握してその部分を構成している一つ一つの命題がどのように接続されているかを正しく捉まえなければならない。そこで上の問題文を、細かく単純な命題に区切って番号をつけてみよう。

1 慣れないスピーチをするとき、口の中がカラカラに渇く。
2 危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は必要な機能を活性化し、不必要な機能を停止する。
3 襲ってきたライオンから逃げるとき、さっき食べたものを消化しているヒマなど有りはしない。
4 危険なときには唾液腺をコントロールする神経は抑圧される。
5 スピーチの時も口が渇くのである。

さて、全体の論理構成としては、1で提出した事実に対して、2で違う方向から説明を開始し、それが5の根拠となっているという構成になっている。また、1と5はだいたい同じ内容を語っているとも考えられる。違うのはその論理的な位置づけになるだろうか。1ではまず事実として提出されている事柄が、5では論理的な帰結として、その前の主張が根拠になって「口が渇く」ということの合理性が語られている。事実として観察されることに、ちゃんとした合理的な説明がつくのだという主張がこの問題文の論理構成ということになるだろうか。

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by ksyuumei | 2008-03-03 09:13 | 論理

論理トレーニング 16 (議論の組み立て)

論理トレーニングの次の例題は以下のものである。


例題3 次の文章を読んで、問に答えよ。

1 考えてみると、私たちの翻訳語というのは、ずいぶん奇妙な言葉である。
2 その翻訳語自体の意味は、むしろ乏しいことが多い。しかし、
3 それ自体に意味が乏しいからこそ、どんな異質な原語にも対応できる。
4 その対置された原語の持つ意味が、その意味とされるのである。たとえば、
5 society を「社会」と置き換える。
6 「社会」という言葉は、もともと society の翻訳用に作られた言葉である。
7 「社」や「会」は漢字であり、漢字の熟語としても「社会」という言葉はないわけではない。しかし、
8 「社」や「会」の意味から「社会」の意味を考えても無駄である。
9 「社会」の意味はもっぱら sociey にかかっている。
10 「社会」は、society とまったく意味が一致する言葉である、と普通は考えられている。
 しかし、
11 それは、日本人の一大発明であった。
12 明治の始め、圧倒的に優越したヨーロッパ文明に直面したとき、私たちの先人たちは、先進文明の言葉をそのままの形で飲み込んでしまわずに、何とか日本語の形に変えて受け止めようとした。
13 その結果、中国渡来の言葉を利用し、しかも、
14 変質させ、もう一つ別の言葉の層を造りだしていったのである。

問 上の文章に関する次の文章の空欄(a)~(g)に、適当な語句ないし文番号を入れよ。

 文章全体から二つの主張(a)と(b)を取り出し、全体を、主張a及びそれに対する解説ないし根拠の部分と、主張b及びそれに対する解説ないし根拠の部分として捉えたい。そのとき、主張aに対する(c)になっているのは(d)の部分であり、主張bに対する(e)になっているのは(f)の部分である。そして、主張aと主張bの接続関係は(g)である。


この問題は、野矢さんが語る次の指摘を元にして考察する。


「議論の基本は、必要に応じて解説や根拠を伴った主張を、付加か転換の形でつなげていくこと、ここにある。」

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by ksyuumei | 2008-03-02 11:05 | 論理