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論理トレーニング 15 (議論の組み立て)

野矢さんが提出する次の例題は文章が非常に長い。慎重に構造をたどっていこう。


例題2 次の文章において、その主題、問題、主張を、それぞれまとめよ。(必ずしも問題文からの抜き書きではなく、自分で的確にまとめよ。)
「自然科学の強みは実験ができることにある。そして実験の本質は、その再現可能性にある。実のところ、自然界に起こっている現象は決して再現可能ではない。一枚の紙をある高さから落としてみても、同じ落ち方は二度とはしない。そこで、現象が再現可能になるような形で、実験を行うのである。たとえば、糸の長さを精密に測るという問題が課せられたとする。これはなかなか厄介な問題であって、糸というものは、実際に測ってみればすぐ分かるように、その長さを精密に決めることはほとんど不可能に近いものである。むしろ精密な長さというものがないといった方が、よいかもしれない。糸をだらんとさせておけば、その長さは測れない。そうかといって、ぴんと張ると、その張り方によっていろいろに伸びるわけである。それに湿度も聞いてくる。それで精密に測ってみると、張力により、湿度により、温度によって、長さがみな違った値に出てくる。そこで他の要素を一定にしておいて、その中の一つの要素だけを変化させてみる。たとえば一定の湿度及び温度の下で、張力をだんだん変えて、長さを測ってみる。あるいは張力を一定にしておいて、湿度をいろいろに変えて測ってみる。そういうふうに長さの測定を、各要素ごとに、その要素の値が決まれば糸の長さも定まるようにして、精密に行う。そうすれば、いろいろな要素が重なり合った、ある条件の下における糸の長さというものを決めることができる。このように、他の条件をなるべく一定にして、ある現象を再現可能なものにする。それが実験なのである。」


この文章も非常に説得力を感じるものであり、論理的に優れているように感じる。こういう文章なら、論理的な分析の対象にしても、おそらく誰が解釈してもこういう結論に落ち着くだろうというようなものが得られるのではないかと思う。

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by ksyuumei | 2008-02-27 10:28 | 論理

論理トレーニング 14 (議論の組み立て)

議論の組み立ての訓練として提出されている問題を考えてみよう。まずは例題として出されている次の問題だ。


例題1 次の文章をより論理的に明確になるように接続関係を明示して書き直せ。
「現在の金融引き締め政策は、海外諸国の好況に支えられた輸出の伸びから貿易収支の好転をもたらしたが、中小企業倒産の異常な増加や株式市場の危機などを招き、産業界からは引き締め緩和の要望が高まっている。」


この例題の文章は、野矢さんによれば、このままでも必ずしも意味が分かりにくいということはないと指摘されている。しかし、それはこの文章が表現する内容をあらかじめ知っているからそういうことが言えるのだということも指摘されている。もし、この内容に対して、そこで使われている用語を知らなかったり、現実のこの状況がうまくイメージできないと、とたんにその内容が読み取りにくくなる。そのような相手に対しても、論理構造は見えてくるように工夫するのが適切な接続詞の使用になる。すでにこの内容を理解した相手に確認のために問いかけるのではなく、初めてこのようなことを考える人間が、その論理的内容を理解する助けになるように書き換えよというのがこの問題のトレーニングになるだろう。

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by ksyuumei | 2008-02-26 10:22 | 論理

論理トレーニング 13 (接続の構造と議論の組み立て)

野矢さんが提出する、接続の構造を求める最後の課題問題は次のようなものだ。


問6 次の文章を読んで問に答えよ。

1 人間の脳には皺がある。
2 これは、われわれが大量の情報を脳で処理しなければならないからである。すなわち、
3 脳において高度な役割を受け持つのは、大脳皮質と呼ばれるその表面、厚さ1.5~4ミリメートルの灰白質の層であり、それゆえ、
4 その部分を増大させようとするならば、直径を大きくするよりも皺をつけて表面を増やした方が有効なのである。

そうして、人間の脳は2200平方センチもの表面積を持つに至っている。また、このことは大量の情報処理を要求しない場合には皺はいらないことを意味している。実際、ネズミなどの脳は滑らかであり、人間でも胎生の初期には脳にまだ皺がなく、滑らかである。

(1)1~4の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。
(2)下線部の「このこと」の内容を述べよ。


まずはそれぞれの文章の前後の論理関係を接続詞を頼りにして考えよう。次のようになっているだろう。

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by ksyuumei | 2008-02-25 10:06 | 論理

論理トレーニング 12 (接続の構造)

野矢さんが提出する次の課題問題を考えてみよう。


問5 次の文章を読んで問に答えよ。
「ディズニーランドが不況にも強い最大の理由は、それが「カルト的ビジネス」の特徴を持っているからです。普通の人が普通の遊園地に行ったならば、一つの乗り物には一回しか乗らないでしょうが、ディズニー・ファンは細かいところにも徹底的にこだわって、乗り物の横に現れる動物をすべて覚えるまで乗り続けたりします。ディズニーランドの方もマニアに応えるための仕掛けを用意していて、隠れミッキーをあちこちにちりばめたりしています。たとえば、ジープのタイヤ跡がミッキーマウスの顔になっていたりするわけです。

1 こういう状況を作り上げてしまえば、そう簡単にデフレに巻き込まれません。
2 他に代わるものがないからです。
3 ディズニー・マニアは、ディズニー以外のものでは満たされません。
4 「ディズニー・キング」でなければならず、「ジャングル大帝」ではだめなのです。
5 このような競争相手が存在しない商売は、デフレ時代にも価格を下げずにすむという強いポジションが保てます。だから
6 ディズニーランドは、一般の遊園地より料金が割高でも超満員になっているわけです。」

(1)1~6の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。
(2)下線部の「こういう状況」の内容を述べよ。


まず、解答を離れて、この問題文の印象を語ると、ここで主張されている事柄は非常に論理が明確で説得力のある主張のように感じる。なるほどそういう見方もあるのかと納得させられる人が多いのではないだろうか。そのように説得力のある文章だからこそ、論理トレーニングとしてふさわしい問題になるのではないかと思う。

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by ksyuumei | 2008-02-24 10:35 | 論理

論理トレーニング 11 (接続の構造)

さて、解答のない課題問題を考えてみようと思う。まずは次の問題からだ。


問4 次の1~5の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。
1 一般に「人殺し」を問題視する人たちは、「殺す者」と「殺される者」が互いに相手を「人」として見ていることを、簡単に前提にしてしまっている。しかし、
2 信じられないような殺戮が実現される裏には、おそらく「相手」をもはや「人」とは見なさなくなっている可能性がある。だから、
3 「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いの立て方は、あまり実情を問う問いになっていない。
4 彼らは「人」を殺そうとはしていないかもしれないからである。むしろ、
5 「なぜ人は、人を人でないものと見なせるときがあるのか」と問われねばならないだろう。


まずはそれぞれの接続詞が示す、その前後の主張の関係を取り出すと次のようになるだろう。

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by ksyuumei | 2008-02-23 10:47 | 論理

内田樹さんへの共感

内田さんの一番新しい本『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(文藝春秋)を読んでいる。この本も随所に共感できる言葉があふれている。まずは、まずは長い「まえがき」からそれを拾い出してみよう。

内田さんは、この「まえがき」を「「あまりに(非)常識的に過ぎるので、あえて言挙げしないこと」があまりに久しく言挙げされずにいたせいで、それが「(非)常識」であることを忘れてしまった方がずいぶんおられるように見えます」ということから書き始めている。僕が年をとって保守的になったせいもあるかもしれないが、このような語りにうなずいて共感する自分を感じる。

同時に、今まで常識とされてきたことに抵抗し、それを改革してきたところに進歩を見ることもできるので、それがちょっと行き過ぎて非常識が蔓延するのも、進歩の代償として仕方のないものかという思いも感じる。両方の思いがあるということは、そのことをあえて言葉にすることに価値があると言えるだろう。常識を壊されたと思う人は、その常識を壊すことを非難するだけだろうが、それが進歩だと考えている人は、それは古いものを無批判に守っているだけにしか見えないだろう。

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by ksyuumei | 2008-02-21 10:03 | 内田樹

論理トレーニング 10 (接続の構造)

野矢さんが、論理構造の解析を求める次の問題は以下のものである。


問3 次の文章を読んで問に答えよ。
「ある心理学者たちはこう主張する--

1 カラーテレビの画像の色は、実は目の錯覚をうまく利用したものなのである。その根拠は、
2 カラーテレビに映った色は3種類の光を発する光点(赤、緑、青)からなっており、たとえば、
3 黄色に見られている部分で実際に光っているのは赤と緑の光点に過ぎず、
4 単にそれが小さいため明確に見えないということにある。それゆえ、
5 目の極端によい人にとってや拡大鏡を用いる場合には、実際にあるようなまだらな画面が見えるであろう、というわけである。

しかしながら、小さいものが見えないことが錯覚の根拠であるとすると、われわれの知覚のほとんどすべては錯覚だということになる。たとえば、われわれはモネの描いた絵を見てそこに睡蓮の花を見いだす。しかし実際にキャンバスの上に存在するのは、様々な絵の具の斑点に過ぎない。それ故、睡蓮の花の知覚は錯覚である。あるいは、水道水は透明に見える。しかし、顕微鏡で見れば分かるように実際にはそこに様々な含有物が含まれている。それ故、透明さの知覚は錯覚である、といった具合である。したがって、このような帰結を避けるのであれば、カラーテレビの場合も、必ずしも錯覚という必要はないことになろう。」

(1)1~5の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。
(2)下線部の「このような帰結」の内容を述べよ。


この問題も、接続詞による部分の構造が、全体の主張と論理的にどうつながっているのか、その接続詞が影響する主張はどこからどこまでなのかを、全体の主張の内容から読み取っていこうと思う。

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by ksyuumei | 2008-02-20 09:45 | 論理

論理トレーニング 9 (接続の構造)

さて、前回積み残した問題の解答を考えてみよう。問題は次のものだ。


問2 次の文章を読んで問に答えよ。
「優秀な技術は、もちろん販売を成功させるための一つの要素ではあるが、その寄与する程度を過大に評価してはならない。技術の独占は意外と長続きしないのである。むしろ、

1 販売力の伴わない技術は、かえって経営を危うくする。
2 どんなに素晴らしい製品も、それが一度発表されたということは、技術的な可能性が証明されたということであり、やがては必ず真似されるということである。だから、
3 もし販売力が弱体なら着想を他人に教えただけのことになって、その製品のウマ味はすべて競争相手がモノにするだろう。

そして、この例は実に多いのである。
ここに我が国でも有数の製薬会社がある。その会社では新製品を他社に先駆けて出すということは滅多にしない。その代わり他社が発売すると、販売方法、その製品の売れ行き、購買層などを徹底的に調べる。このデータはおそらく発売した当の会社よりも遙かに詳しいであろう。そしてよいとなったら、直ちに全力を挙げてスタートし、会社の販売力にものをいわせて数ヶ月のうちに猛然と追い抜き、やがて皆が気がついてみると、トップ・メーカーとなっていたというやり方をしている。

4 このような方法は、ある意味できわめて合理的である。というのは、
5 全く新規な製品を出すときは、市場がそれをどう受け取るか、信頼度の高い予測をすることは難しい。だから、
6 このように計画的に他社の後手に回れば、相手が一つの市場実験をしてくれて、データが有り難くいただけるわけである。しかも、
7 そのデータは再現性がはなはだよい。したがって、
8 当たるかどうか分からない新製品を他に先んじて出すことに比べれば、失敗の危険性を最も小さくできるわけである。

この方法は販売力に十分の自信があるときには、利口な方法ということができよう。」

(1)1~3の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。
(2)4~8の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。
(3)下線部の「この方法」の内容を述べよ。


この(2)の解答が、野矢さんの本では

    ((5→6)+(7+8))→4

となっていた。これは、7と8のつながり方がちょっと違うのではないかという感じを僕は抱いている。単なる付加ではなく、「したがって」でつながれている、論理的な帰結を感じるような内容の関連があるように感じる。失敗の危険性を小さくできるのは、「再現性がよい」ことから導かれるように思う。

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by ksyuumei | 2008-02-18 10:10 | 論理

論理トレーニング 8 (接続の構造)

さて、次に野矢さんが提出する練習問題を見てみよう。これも接続の構造を分析するものだ。


問1 以下の文章は、日本の「洋間」を訪れた外国人がその部屋を「和風」だといって賞賛するという設定の発言である。1~5の接続構造を記号と番号を用いて図示せよ。
「窓が大きくて、天候の変化や季節の変化が部屋全体の雰囲気に影響を与えているのも、和風の最たるものよね。ヨーロッパでは屋外の変化をシャット・アウトしちゃうの。窓を小さくしてね。それから、この大きな窓が南向きなのも、和風ね。朝から陽が入って、夕方の西陽までが、だんだんめぐっていくのね。
1 こういう陽当たりをヨーロッパでは嫌うわ。
2 ワニスをたっぷり塗った年代物の家具が色あせるし、
3 乾きすぎるとヒビワレが来るでしょう。
4 カーペットも色あせるから陽当たりには出したくないの。だから
5 ヨーロッパでは南向きの部屋は安くて、北向きは高いの。」


この文章を論理的に分析するのは意外と難しい。なぜなら、文章が日常会話の言葉で語られていて、論理を直接示す接続詞があまり使われていないからだ。会話の中で、いちいち接続詞を使って論理を確認しながらしゃべる人は少ないのではないかと思う。上の5つの主張は、その内容から、論理のつながりを解読していかなければならない。

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by ksyuumei | 2008-02-16 09:45 | 論理

論理トレーニング 7 (接続の構造)

接続の構造は、野矢さんの解答を見ても、それが正しいと確信するのに苦労するところがある。全体の構造というのは、単に部分である言葉(接続詞)だけを見ていても分からないところがあり、文脈というものを読み取る必要があるからだろう。この文脈というやつは、いつでも勘違いしてしまう可能性がある。何らかの先入観があって文章を読むときは、そこに書かれていない事柄を前提にして読んでしまうので、表現された論理以上のものを論理的に読み取ってしまうのではないかと思う。野矢さんが、その構造を解析するように求める問題を見てみよう。


例題3
「1 語の意味とは、単なる定義的意味ではない。たとえば、
 2 「独身」という語は、「結婚していない成人」と定義される。しかし、
 3 この定義に当てはまるにもかかわらず、同棲しているゲイのカップルやターザンやローマ法王などを「独身」と呼べば、「それはおかしい」と思うだろう。
 4 この語は、「結婚及びその適齢期に関して一定の期待がある社会」という文脈でなければ、意味をなさないからである。つまり、
 5 この語は、定義を知るだけでなく、その語が用いられる文脈をも知らなければ、使用できないのである。」


それぞれの主張を接続詞で関係づけると次のようになる。

  1 たとえば 2
  2 しかし  3
  3(なぜなら)4 だから
  4 つまり  5

3と4の間には、問題文には接続詞が使われていないが、「意味をなさないからである」という言い方から、接続関係は「なぜなら」という語を使って表現されると解釈した。この接続関係がどの範囲まで及ぶかというのに答えるのが、文章全体の論理構造、すなわち接続構造を解析することになる。

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by ksyuumei | 2008-02-14 10:14 | 論理