2008年 03月 03日 ( 2 )

論理トレーニング 18 (議論の組み立て)

さて、長い問題文の問2を見ていこう。


問2 次の文章において、その主題、問題、主張を、それぞれまとめよ。(必ずしも問題文からの抜き書きではなく、自分で的確にまとめよ。)
「今日の日本では、人体の一部の無償提供は禁止されていない。献血や、骨髄や腎臓の提供はむしろ立派な行動と考えられている。ところが臓器の売買は法律によって禁止されている(臓器移植法第11条)。だがそれはなぜだろうか?臓器を無償で提供することと有償で提供することに、どうしてそんな相違があるのだろうか?前者の人は患者を助けたいという利他的欲求だけから出ているのに、後者の人はそれよりも臓器の対価を得たいという利己的な欲求が強いからいけないのだろうか?しかし取引によって自分の利益を得たいというのは自然な欲求で、これを一般的に禁止していたら市場経済は成り立たない。だが議論の都合上百歩譲って、臓器移植の場合は無償の贈与の方が望ましいと認めてみよう。しかしそうだとしても、臓器を無償で提供する方が有償で提供するよりも賞賛に値する、と言えるにとどまる。始めから臓器を提供しない人と比べて、有償で提供する人が非難されるべき理由があるだろうか?前者の人々は臓器移植を求めている人々から利益を得ているわけではないが、その一方彼らに利益を与えているわけでもない。これに対して、自分の臓器を売る人々は対価と引き換えにではあるが、その対価以上に臓器移植を求めている人々にとって望ましい選択肢を与えている。臓器を売る人の方が売らない人よりも社会のために役立っているのである。」


この問題文は、最後の主張になっている「臓器を売る人の方が売らない人よりも社会のために役立っているのである」ということに違和感を覚えるのではないかと思う。この主張そのものに説得されがたいものを感じる。説得されがたいために、この文章そのものの論理構成に欠陥があるのではないかという疑いすら生じる。しかし、野矢さんがこの文を問題として選んだということの意味を考えると、賛成しがたい主張であっても、論理的にはその構成に不備がないものがあり得るというものとして提出されているのかもしれない。実際、野矢さんは解答で次のように注意している。

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by ksyuumei | 2008-03-03 23:08 | 論理

論理トレーニング 17 (議論の組み立て)

さて、野矢さんが提出する練習問題を考えていこう。まずは次の問題だ。


問1 次の文章をより論理的に明確になるように接続関係を明示して書き直せ。
「慣れないスピーチをするようなとき、口の中がカラカラに渇くが、危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は必要な機能を活性化し、不必要な機能を停止する。襲ってきたライオンから逃げるとき、さっき食べたものを消化しているヒマなど有りはしない。危険なときには唾液腺をコントロールする神経は抑圧され、スピーチの時も口が渇くのである。」


この問題を解くには、まず全体の論理構造を把握してその部分を構成している一つ一つの命題がどのように接続されているかを正しく捉まえなければならない。そこで上の問題文を、細かく単純な命題に区切って番号をつけてみよう。

1 慣れないスピーチをするとき、口の中がカラカラに渇く。
2 危険な状況に陥ると、一般に動物の身体は必要な機能を活性化し、不必要な機能を停止する。
3 襲ってきたライオンから逃げるとき、さっき食べたものを消化しているヒマなど有りはしない。
4 危険なときには唾液腺をコントロールする神経は抑圧される。
5 スピーチの時も口が渇くのである。

さて、全体の論理構成としては、1で提出した事実に対して、2で違う方向から説明を開始し、それが5の根拠となっているという構成になっている。また、1と5はだいたい同じ内容を語っているとも考えられる。違うのはその論理的な位置づけになるだろうか。1ではまず事実として提出されている事柄が、5では論理的な帰結として、その前の主張が根拠になって「口が渇く」ということの合理性が語られている。事実として観察されることに、ちゃんとした合理的な説明がつくのだという主張がこの問題文の論理構成ということになるだろうか。

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by ksyuumei | 2008-03-03 09:13 | 論理