2008年 01月 20日 ( 1 )

他者への伝達

2回ほど前のマル激トークオンデマンドでは、生物学者の福岡伸一さんがゲストに招かれていた。そこでなされていた議論の中心は生命についてなのだが、それ以上に印象に残った言葉は、福岡さんがスキーを習ったときのエピソードだった。そこに、教育というものの最も大切な要素である「他者への伝達」の本質が語られていたように感じたからだ。

福岡さんがスキーのインストラクターについて習ったときに、まずは見本のように滑って見せて、さあこのようにやってくださいというようなことを言われたらしい。しかし、自他ともに認める運動音痴の福岡さんにしてみれば、「見たように身体を動かす」ということがいかに難しいことであるかが、インストラクターには伝わらない。

だから、もちろん見たような動きでは滑れないのだが、それを見てインストラクターは、「どうしてこんな簡単なことがあなたにはできないのですか?」というような目で福岡さんを見ているように感じたという。ここにある「他者への伝達」の難しさを、福岡さんは次のように解説していた。

インストラクターになるような人は、子どものころからスキーがうまくて、おそらく基本的なことはそれほど苦労せずに習得してしまったのだろうと思う。つまり、どのような過程を経れば、基本的な動作が合理的にうまくいくかという過程を自覚することが出来ないのではないか。無自覚に過程を通過した人間は、その過程を他者に説明することが出来ないのだ。その事をやって見せることは出来るのだが、それがどんなメカニズムで動いているかということは説明できないのだ。

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by ksyuumei | 2008-01-20 15:27 | 雑文