2007年 10月 15日 ( 1 )

『論理哲学論考』が構想したもの5 論理空間における否定

野矢茂樹さんの『『論理哲学論考』を読む』では、否定の「ない」という言葉は「名」ではないという考察がされていた。つまり、否定表現に相当するような「対象」が現実に存在しないということが指摘されていた。否定は、「事実」から「対象」が切り出され、その「対象」の像である言語を結合させて作った可能性が現実に見出せなかったときに、論理的判断として否定判断の「ない」が生じる。可能性を考察できなければ否定判断も出来ないという関係にある。

この否定判断の特徴をもっと際立たせて考察するために野矢さんは「点灯論理空間」というものを設定する。それは二つの明かりaとbだけが実体として存在する空間で、可能な「事態」としては、その明かりが「点いている」「点いていない」という二つの状態のみが語られる空間だ。可能な事態は次の4つに絞られる。

1  aが点いていて、bが点いている。
2  aが点いていて、bが点いていない。
3  aが点いていなくて、bが点いている。
4  aが点いていなくて、bも点いていない。

上の4つは、普通に否定表現を使って「事態」を表現しているが、否定表現というのは、それに対応する「対象」を現実の中に持たないので、現実の「事実」から切り出された「対象」から構成される論理空間にはそのままの形で否定を持ち込むことが出来ない。「事実」として切り出される「対象」は、aとbという実体的な明かりと「点いている」という属性のみになり、これらを組み合わせて論理空間を作れば、上の4つに対応した「事態」の集まりは次のようになる。

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by ksyuumei | 2007-10-15 10:00 | 論理