2007年 06月 22日 ( 1 )

道徳と法律の社会法則

板倉聖宣さんは、社会法則を学ぶための授業書として「生類憐れみの令」と「禁酒法と民主主義」というものを作った。これは仮説実験授業の授業書として作られたもので、社会にも法則性があるのだという科学的視点を教えるための授業所だ。過去にこういうことがあったという事実を知るためのものではない。

ここで語られている法則を抽象的に言えば、道徳を法律化したときの社会に対する影響というものがどういう現れ方をするか、ということを法則化したものと言える。道徳的に正しいことは、善悪の判断から言えば、いいことに決まっている。いいことだからそれを実現することが正しいと誰もが思う。そういうものは、人々の自発的な意志にゆだねて実現すべきもので、法律化して強制的に実現すべきものではない。もし、誰もがいいと思うことを法律によって強制化して実現しようとすると、予想に反して道徳的には堕落するという結果を招く。これが社会の法則なのだということを、具体的な法律である「生類憐れみの令」と「禁酒法」を通じて学ぼうというのが、この授業のねらいだ。

「生類憐れみの令」というのは、生き物を大事にしなければならないという道徳を法律化したものだ。これは、俗に言われているように、生き物のすべてを殺してはいけないというばかげたものではなく、むやみな殺生をしてはいけないという道徳を実現しようとするものだった。生き物をすべて殺してはいけないということでは、我々には食べるものがなくなってしまうということがあるので、そこまで極端ではなかったようだ。しかし、殺生が可能な限り制限されたことは確かだったようだ。

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by ksyuumei | 2007-06-22 09:37 | 内田樹