2006年 03月 26日 ( 2 )

「贈与」の考察 2

ジョン・ロックについて調べようと思って図書館で借りた本の中に『貨幣の思想史』(内山節・著、新潮選書)という本があった。これがなかなか面白かった。人間にとって貨幣がどういう意味を持っているのか、なぜ貨幣を求めるのか、というのを考察している。内山さんは経済学者ではなく哲学者なのだが、貨幣そのものの考察ではなく、人間にとっての貨幣の意味を考察するという点では、内山さんが哲学者であったが故に面白い視点を語れたのではないかと僕は感じた。

この本の第一章の冒頭に次のような記述がある。


「言うまでもなく、部分的な交換財としての貨幣の成立も、稀少物質や何らかのものが貨幣と同じように交換財として利用されるようになった時代も、遙かに昔まで時代を遡らなければならない。だがそのような貨幣は、本書の対象外である。なぜなら中世後期に入って、都市社会から今日に受け継がれていく「近代的貨幣」が登場してくるまでは、貨幣は交換のある部分を担っているに過ぎず、富の絶対的な価値基準ではあり得なかったからである。よく知られているように、それまでの農村共同体内では、交換は共同体的慣習に従って主として贈与の形で行われていたのであり、この形は中世都市でも領主と騎士の間などでしばしば行われていた。貨幣は近代的な商品経済が台頭してくるまでは、普遍的な流通財ではあり得ず、すべてのものを購入出来る普遍的な商品としての機能を確立してはいなかった。とすれば、貨幣が富の絶対的な価値基準になり得たはずはない。」

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by ksyuumei | 2006-03-26 13:06 | 雑文

『国家の品格』の二流性 2

内田樹さんは、「藤原さんの言っていることのコンテンツについては、ほぼ95%私は賛成である」と語っていた。そういう意味では、この本はごく常識的なことを語っていると思う。それは、見方を変えれば、常識を越えるような「目から鱗が落ちる」というようなことは語っていないと言うことだ。そこのところに僕はまた二流性を見る。

常識的に多くの人に賛成してもらえることで、ちょっと日本人の自尊心をくすぐってくれるような心地よい言葉にあふれていれば、大衆的な人気は得やすいのではないかと思う。これは、一流の人間の斬新な視点が理解されるのに時間がかかるのと比べると、今すぐに理解されてポピュラーになるという点では、二流性の故にベストセラーになったと言えるのではないだろうか。一流の言説は、時代を超えているだけに、その時代の中で理解されるのが難しい。時代がようやく追いついたときに再評価されることになるだろう。

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by ksyuumei | 2006-03-26 10:24 | 雑文