ライブドア問題再考 3

ライブドアの会社としての行為に違法性や犯罪性があったのかどうかを確認するというのは、一見マスコミと同じように、ライブドアや堀江氏を叩く行為に見えるかも知れない。日頃マスコミを批判している人間が、マスコミと同じことをしているのは矛盾しているのではないかと思われそうだ。僕がしていることとマスコミの違いというものを考えたいと思う。

僕がライブドアに対して違法性や犯罪性を考えるのは、それがあったという前提でライブドアや堀江氏の「壊し屋」の面を評価するのか、それがなかった・つまり嫌疑は冤罪だという前提で評価するかというのが、議論としては違ってくると思ったからだ。

マスコミは、おそらくライブドアと堀江氏を叩くだけで、そのあとに「壊し屋」としての面をどう評価するかという報道には行かないだろう。今は叩くことがポピュラーなので、売れる報道をするだけだろう。僕は、山根さんの分析を信頼している立場からいって、ライブドアには違法性も犯罪性もあったという前提の元で考えようとしている。その点ではマスコミと同じだが、その前提に立った上でもなおかつ「壊し屋」としてのライブドアと堀江氏は評価出来るという論理を展開しようとしている。



それはマスコミと違う点ではないかと思っている。もし、マスコミもそのような方向に報道がシフトするなら、マスコミをちょっと見直そうかとも思うのだが。僕は、ニッポン放送の買収の件の時に、ライブドアや堀江氏をどう評価するかということが分からなかった。その行為は、古いものを破壊して新しい方向へ向かうことを意味していることは分かったのだが、その破壊している古いものは、破壊されるべきものだったのかどうかが分からなかった。

そんなときに、神保・宮台両氏のマル激で堀江氏の「壊し屋」の面を評価する言説を聞き、それに共感して、堀江氏に新しい時代の革命を期待したこともあった。神保氏なども、記者クラブの弊害を打ち破るきっかけを期待したようだ。しかし、その後の事態の収拾を見ると、堀江氏の「創り屋」としての面はあまり発揮されなかったようだ。だが、「壊し屋」としては、テレビをはじめとするマスコミ報道のあり方を、自然崩壊するよりも早める方に役立ったと評価していた。僕もそう思って、その言説に共感していた。

ライブドアの違法性・犯罪性が明らかになってからでも、この評価を持ち続けることが出来るか、という議論を考えるために、僕は違法性・犯罪性を考えている。ライブドアや堀江氏を叩いて溜飲を下げるのが目的なのではなく、議論の前提としてそれを確認した上でもなお彼らを評価出来るかということを考えることが僕の目的といえばいいだろうか。

「ライブドア問題再考 2 のコメント欄」にmechaさんが、山根さんの文章の理解に非常に役立つコメントを書いてくれた。僕の場合は、論理面の理解をすることで精一杯で、その内容を深く理解するのはまだ難しかったが、さすがに専門家の観点は、そこに書かれたこと以上のものを読みとっているものだと感心した。

素人は、そこに書かれていることを、書かれている言葉を頼りに文脈を読むことしかできない。だから、ある意味では、そこで論じていることの全体ではなく、部分をまず理解するということしかできない。しかし、専門家は、すでに対象の全体像を把握した上でその文章を読むので、そこに書かれている、部分に対する言説が全体の中でどう位置づけられるのかということが分かる。書かれていることの正しい評価が出来るわけだ。

mechaさんのおかげで、山根さんが語るトリックの具体的内容がよく分かった。専門家でない方で、そこに関心がある方は、このコメントを読むことをおすすめする。僕も、今後の分析で、このコメントから引用して考えるということをさせてもらいたいと思う。自分の知らない観点を教えてもらって、理解が深まっていくという体験ができることは、インターネットでの出会いでの素晴らしい面ではないかと思う。

さて、「ホリエモンの錬金術 -4」に書かれている、第3のトリックを考えてみたいと思う。これは「法外な株式分割あるいは公募増資とセットでなされた決算数字のお化粧です」と語られている。これまでの二つのトリックは、非常識ではあったけれど、それを裁く法律がまだ制定されていなかったという点では、網の目をくぐったと言えるかも知れないが、この3つ目のトリックに関しては「上場後の株価を維持、あるいは更につり上げるため」に無理をせざるを得なかったという面があったようだ。その無理が、違法性につながってくるのではないかと思われる。

マスコミが報道する違法性は、ほとんどがこの点に集まっているようにも感じる。しかしそれは、「粉飾決算」「風説の流布」などという単語が飛び交っているだけで、その具体的内容が分からない。山根さんの分析で、具体的イメージがつかめるだろうか。

山根さんは、「以下、私がライブドアの決算書を敢えて“いかがわしい”ものであると判断した根拠の一端を示します」といって、細かい数字をあげながら説明をしている。残念なことに、この細かい数字については、素人としてはよく分からないことがたくさんある。よく分からないことを信じるというのはそれなりの危険性があるのだが、僕は山根さんを信じる方に気持ちが傾いている。

それは、mechaさんのコメントを見ても分かるように、専門家であれば山根さんの語っていることの評価はすぐに出来るのではないかと思うからだ。すぐに評価出来ることを、誰でも見られる公開の場に提出するということは、素人をだます目的でやられることはおそらくないだろう。細かい数字をひけらかして素人を煙に巻くことが目的なのではなく、専門家として確かなことを言うには、数字の裏付けを元に言うことが必要だったのだろうと僕は感じる。

mechaさんにもう一つ甘えてしまうと、僕がこれから語る大雑把な素人の理解の補足説明していただければありがたいと思う。僕は、山根氏が語る細かい数字が、全体の中でどう位置づけられて、何の根拠になっているかという細かい理解は出来ていない。だから、かなり単純に構造だけを取り出して理解することになると思うのだが、どのようにライブドアが利益が上がっていることを装っているのかと言うことの、構造的に単純な部分を理解するように努力したい。

原価計算というのは、「企業内部活動における製品の製造に消費された費用(原価)を計算する手続きである」と書かれていた。これは素人が理解する範囲では、必要経費として、利益を計算するときには除かれるお金になるのだろうかと感じる。山根さんは、


「この原価明細書には2つの部門に仕掛品が合計で、26百万円ほど計上されており、残りの4つの部門には全く計上されていません。B/S上との差異の539百万円は一体どうしたのでしょうか。」


と書いているが、ここに語られた「差異の539百万円」は、使われていないことになっているという意味だろうか。つまり、この金額が利益のように扱われているのだといっているように読める。この金額は、「仕掛品565百万円全額がソフトウェア事業のものとなっている」というので、ライブドアそのものの負担ではないと報告されているようだ。しかし、「ソフトウェア原価明細書にはどこを見ても仕掛品がないのです」というのは、素人が考えても不思議だ。その金額は、いったいどこが負担しているのだろうか。

「この539百万円という金額は、第9期の経常利益(単体)1,410百万円の38%にも相当するもので、無視できるものではありません」とも山根さんは語っている。つまり、このときにライブドアが利益として提出した数字のうち、かなりの大きな部分が、本当は利益ではなかったのではないかという疑いを持たれるようなものになっているという指摘だろう。

債権については、「ライブドア単体には不良債権は存在しないし、グループ全体で見ても、ライブドア証券以外には、不良債権はほとんど存在しない」と言うことが、発表されたデータからは結論出来るそうだ。細かいことはよく分からないが、この発表を信じると、ライブドアは優良な企業ばかりを買収して会社が発展してきたと言うことを信じさせるような内容になっていると、素人なら思うのではないだろうか。

証券市場と言うところは、だまし合いの場なのであるから、素人であっても単純に信じてはイケナイというのは大切だと思うが、ライブドアが、山根さんの指摘するとおりにいかがわしいことを繰り返していたのなら、信じたことを素人の自己責任に帰するのは、証券市場の健全性を損なうことになるのではないか。ライブドア株の購入者の大半が、もしも株の素人だったら、ライブドアの犯罪性というのも重大なものになるのではないだろうか。専門家がどのようにライブドアの株に手を出したのか、素人がどのように売買に関わっていたのかを分析するのは大切ではないだろうか。マスコミだったらそれが出来ると思うのだが、どこかがやってくれるだろうか。期待出来ないとは思うが。

山根さんは、


「違法とされる粉飾決算であるかどうかは、会社の再監査をしてみなければ判断できませんので、現段階での判断は差し控えます。
 ただ、適法か違法かの問題は再監査にゆだねるにしても、企業の経営実態を直視する経営診断という立場に立ってみますと、ライブドアは、上場以来、連結でも単体でも全く利益を出していない、それどころか、資本金と資本剰余金までも大幅に食い込んでいるもの(つまり欠損会社ということです)と考えられます。
 これが30年間会計屋として飯を食ってきた私の判断です。」


と語っている。もし、このような判断が出来たなら、ライブドアが成長企業であるという判断をする人は多くなかったのではないだろうか。山根さんのような専門家だったら、約1年前からこのような判断が出来ていた。しかし、素人はほとんどこのような判断が出来なかったのではないだろうか。華々しく株が上がっていく現象を見て、ライブドア株はいい株だという錯覚を起こしたのではないだろうか。このギャンブルは、やはりいかさま博打ではなかったのだろうか。

山根さんはこのエントリーの最後に、


「堀江さんは、企業経営はおろか、上場企業の決算さえどのようなものであるのか、ご存じないようです。台所にある魚を盗み食いしたドラ猫が、口をぬぐったつもりで素知らぬ顔を決め込んでいても、口のまわりにウロコがしっかりついていたりして。バレバレ?」


と書いている。堀江氏は、金が流れて自分の所に入ってくるということに関しては、実に鋭く計算していたが、その金の流れの正当性に関しては、あまりよく分かっていなかったのではないか、という山根さんの指摘は、それが真相なのではないかという感じがしてならない。
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by ksyuumei | 2006-02-02 10:03 | 社会


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