ライブドア問題再考 2

山根さんの「ホリエモンの錬金術 -3」に書かれている「ホリエモンのマジック」の3つのトリックについて考えてみたいと思う。まず最初のトリックは次のように説明されている。


「一つ目のトリックは、5年前のマザーズ上場に際して、会社の評価額を、なんと1,440倍にもつり上げていることです。目を疑いましたね。」


僕は株に詳しくないので、会社の評価額が1440倍になるということが、普通に起こりうることなのか、常識はずれのことなのかが分からないが、専門家の山根さんが驚いているくらいだから、これは非常識な現象ではないのかと思う。もし、これが整合性のある出来事なら、評価額が1440倍になることに見合うだけのライブドアの成長の見込みがなければならないのではないかと思う。確実にヒットする新しい商品を独占的に開発したとか、そのようなことがなければこれだけの評価額の上昇はないのではないだろうか。株に詳しい専門家が、この記述の意味を解説してくれるとありがたいと思うが、素人考えでは、1440倍というのは、やはりとんでもない数字ではないのかと感じる。




「この2社とホリエモンによっていかがわしい上場シナリオが創り上げられた形跡があり、そのシナリオをもとに、株式会社オン・ザ・エッヂ(ライブドアの前身)という零細企業を、“かご抜け増資”(私の造語です)によって、いかにももっともらしい会社に仕立て上げ、ヘンシンさせているのです。」


と書いている内容に関しては、具体的に何が「いかがわしい」かが書いていないので、読み手としては印象を受け取るしかないのだが、1440倍という数字にいかがわしさを感じていると、この言葉にも説得力を感じてしまう。さらに、


「ホリエモンが、口を開けば会社の価値についてもっともらしいことを喋り、「現在のライブドアの企業価値は2,000億円だ」などとホラを吹いていることのルーツは、まさに、フーセンのようにふくらませた作為的な評価額にあります。実体が全く伴っていないのです。つまり、上場時の公募価格の値決めが、極めていいかげんなもので、ゴマカシそのものであった、ということです。」


という記述を読むと、その数字の成長に、やはり信じられない「いかがわしさ」を感じてしまう。どのようにすれば、2000億円という企業価値の数字が生まれるのだろうか。その根拠はどこにあるのだろうか。また、約1年前の時点で2000億円だった企業価値は、今回のライブドアショックの直前には8000億円にもなっていたという指摘もあった。(「ビデオニュース・ドット・コム」の中の「M&Aの専門家が語る「ライブドア・ショック」永沢徹弁護士・安田育生ピナクル株式会社代表取締役会長(2006年1月20日外国特派員協会)」で、安田さんが語っていた。)

この第1のトリックについては、その「いかがわしさ」の具体性をもう少し理解したいと思う。そして、それが本当に「いかがわしい」のかどうかということをよく考えたいものだ。さて2つ目のトリックは「株式分割」についての指摘だ。これは、マル激での議論を聞いてある程度分かってきたので、ここに書かれていることもかなり理解出来る。


「二つ目のトリックは、常軌を逸した株式分割です。法外なまでにつり上げられた評価額をスタートとして形成された“株価”を維持、あるいは更につり上げるためになされたとしか考えられないもので、ここまでヒドイ株式分割は前代未聞であり、これをもって適法であると強弁することは難しいでしょう。」


と書かれた文章は、ここにも具体的な指摘はないが、その前段階を理解していると、この指摘はもっともだという感じがする。特に、「“株価”を維持、あるいは更につり上げるため」という目的の元に株式分割がなされたという指摘は、確かにその通りだろうという感じがする。株式分割自体は合法だからいいのではないかという考えもたくさんあるようだが、合法だったら「何でもありだ」という考え方自体に僕は疑問を感じる。株式市場とか証券市場というのが、そういうだまし合いが普通の所であっていいものだろうか。山根さんの指摘に説得力を感じるのは、山根さんは、この市場が健全でなければならないという前提に立っているように感じるからだ。山根さんは次のように書いている。


「確かにおかしいが、株式分割自体は違法ではないから仕方がないと考えている向きもあるようですが、トンデモありません。
 これらの株式分割は、きまって公募増資の前後になされており、なかでも平成16年4月24日の公募増資の2ヶ月前に行なわれた100分割とそのわずか4ヶ月後に行なわれた10分割は、余りにも見えすいたヒドイものでした。この期間のライブドア株の売買手口を克明に洗ってみると、あるいは、株価操作とかインサイダー取引といった問題が出てくるかもしれません。」


株式分割そのものは違法でないかも知れないが、健全な成長の元に企業価値を上げたのではなく、無理やり操作してあげようとしているのなら、そこには「株価操作とかインサイダー取引といった問題が出てくるかもしれません」という指摘は頷けるものだ。表に現れた現象に違法性が無くても、その無理のために、裏では違法行為が行われている可能性はあるのではないか。そこに問題性を感じる。

この株式分割のトリックをさらに具体的に指摘したものとして、「大機小機」“盤側”氏。日本経済新聞、平成17年3月15日号のコラムを紹介している。これも孫引きしておこう。


「株券の印刷が間に合わず、売り手が株券の受け渡しができないことを見越して、百対一の株式分割を繰り返したのが今話題の企業である。百対一の株式分割をすれば株価は百分の一になるはずが十八倍にもなる。下がる時期も分かっているから往復で大もうけだ。こんなのはたった今でも違法に決まっているようなものだが、現実には適法とされ、しかし問題だから改正が必要とのことだ。」


この説明は、ビデオニュース・ドット・コムの神保氏の説明と同じもので、これなら素人にもその批判の根拠がよく分かる。株が値上がりすることが確実に分かっていて、しかもそれを持っているのは自分だけであるという状況が生まれるなら、高いうちに売って、値が下がってから買い戻すということをすれば、その差額で儲けられるのは確実だ。株がギャンブルだとしても、確実に勝てるギャンブルをするというのは、これはいかさま博打ではないのか。ギャングの世界でもいかさまは悪だ。まして、普通の市民が参加する株式市場でいかさまが行われるのは問題ではないのか。

このコラムでは、「米国は不公正取引を網羅的に捕まえる包括規定が大活躍するため、やましい行為に対する抑止力が働く」と書いている。つまり、株式市場はギャンブル性があるとはいえ、違法でなければ何でもありだという無法地帯ではないということだ。

「「適法だが問題だから法改正」との見解は、害されている被害や損われている価値の回復や救済は行なわないことを意味する」という指摘の意味は非常に重いものを感じる。法改正されて、そのようなことを行わなければ、改正前の行為は問われないとなったら、株式市場は、法の網の目をくぐろうとする頭のいい・悪いやつのやりたい放題の場になってしまうだろう。「日本の資本市場、企業社会の劣化はとどまるところを知らないだろう」という指摘につながっていくのではないかと思う。今回のライブドア問題に、このような「劣化」に歯止めを打つというような意識がなかったかどうかを考えたいものだ。

山根さんのページを紹介してくれたシカゴブルースさんの濫觴という掲示板で「211 Re:ホリエモンの実像」という書き込みに、今度は南堂久史さんという人の「ニュースと感想 (100)」というページが紹介されている。

このページの下の方に、1月18日あたりから僕が考えたこととまったく正反対の主張が書かれている。この論理展開は、論理としては穴が見つからず、なかなか見事なものだと思った。しかし、説得力という点では、僕は山根さんの方に説得力を感じる。それは、南堂さんの前提が、株などというものは所詮ギャンブルであって、違法でなければ何でもありだ、というものに感じるからだ。

もし「何でもあり」の世界が株の世界であるなら、ライブドアの行為もそれほど大したものじゃなく、だまされる人間の方が悪いということになる。しかし、そのような世界は、僕は健全な世界にはなり得ないと思っている。株の世界は健全性が無くてもいいのか、という疑問が僕には大きい。健全性を守るために不正を告発するという姿勢が山根さんには見られる。僕は、こちらの姿勢の方を支持する。

3つ目のトリックについては山根さんは「ホリエモンの錬金術 -4」に次のように書いている。


「3つ目のトリックは、法外な株式分割あるいは公募増資とセットでなされた決算数字のお化粧です。上場後の株価を維持、あるいは更につり上げるためのものでしょうか。」


ここには粉飾決算という違法性の匂いもあるようだ。項を改めて理解を図ってみようと思う。
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by ksyuumei | 2006-02-01 09:07 | 社会


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